本記事では働き方改革について解説しています。働き方改革とは何か、就職活動や新卒採用への影響や注目すべきポイントをまとめています。
日本政府が進める働き方改革は、過度な残業の是正やワークライフバランスの向上を目指したものです。また、多様な働き方を推進し、労働環境の改善を図ることも目的としています。働き方改革が就活や新卒にどのような影響をもたらすのかについても説明しているので、働き方改革に関する基本を理解し、はたらく環境を選ぶ上での参考にしてください。
働き方改革って何?
まずは働き方改革について、基本的な目的を解説します。
そもそも働き方改革とは?
働き方改革は、日本の長時間労働やワークライフバランスの課題に対処し、はたらく人々の生活の質を向上させるための重要な取り組みです。この取り組みの背景には少子高齢化による若い労働者不足が深刻化している状況があります。その問題を解決するために、職場の環境や労働条件の見直しを行うこととなりました。
2018年6月に働き方改革法案が成立し、労働に関する法律の改定が行われました。この法案は、安倍前首相が掲げた「一億総活躍社会の実現」にも大きく関わっており、日本の全国民が活躍できる社会の実現が目標となります。
労働者のはたらき方をより良い方向へと改善するほか、生産性の向上や出産や育児による休職で発生する男女不平等を是正するといったことも、働き方改革の目指す内容に含まれます。
働き方改革の主な目的
「はたらきすぎ」を防ぐ
はたらきすぎを防ぐことが、働き方改革の主要な目的の一つです。昨今、多くの企業で長時間労働が常態化しています。過労によって従業員が健康やワークライフバランスを損ない、心身の健康を崩してしまうケースは、決して少なくありません。そのような「はたらきすぎ」を防ぐために、働き方改革においては法的な残業時間規制の導入などをはじめとした具体的な取り組みが行われています。
働き方改革によって労働者が過度な労働から解放され、より充実した生活を送るための時間と余裕を持つことが期待されています。
労働生産性の向上
労働生産性の向上は、働き方改革におけるもう一つの重要な目的です。
業務プロセスの見直しや新たなテクノロジーの活用、スキル向上支援などの取り組みによって、労働環境の見直しを行うことが例として挙げられます。また、労働者が効率的に業務に集中できるよう、快適な職場環境や適切な労働時間の推進、ストレス軽減の施策などに取り組むことも推奨されています。
例えば、業務のデジタル化によって作業の合理化や自動化が進めば、無駄な時間を削減できます。また、スマートフォンやクラウドツールを利用したリモートワークが広がれば、通勤時間の削減や柔軟な労働スタイルが促進されるでしょう。
労働生産性の向上は、企業の収益性向上や労働者の職場満足度向上につながり、結果として会社全体の健全な成長に影響します。
ワークライフバランスの実現
現代社会では多くの人が仕事に追われ、時間やエネルギーを費やしすぎる傾向があります。これにより、ストレスや健康問題、家庭内の不調和が生じるケースも少なくありません。健全なワークライフバランスの実現は、このような課題に対処するための手段として有効です。
柔軟な労働時間制度やリモートワークの導入などを行い、従業員が仕事と生活の間で適切なバランスを取れるように支援することで、従業員の満足度や生産性の向上が期待できます。また、健全な労働環境の提供は労働者の定着率向上にも効果があるため、企業と労働者の双方にメリットのある取り組みだといえるでしょう。
多様な働き方の推進
特にコロナ禍以前のはたらき方は、通勤して会社で定時まではたらくといったスタイルが主流でした。しかし、現在では技術が進化し、はたらき方に対する多様な価値観が広まったことで、従来のはたらき方に捉われない、柔軟な選択肢が実現できるようになっています。
多様なはたらき方とは、リモートワーク、フレックスタイム、パートタイム労働、フリーランス、副業などのさまざまな形態を指します。このようなはたらき方が一般的になることで、はたらく人々は自身のライフスタイルに合ったはたらき方をより自由に選べるようになります。
働き方改革の主要な取り組みと内容
以下では、日本政府が推進している主要な働き方改革の取り組みと、その内容を紹介します。
1.残業時間の上限規制
日本の働き方改革の中で、最も注目されたのが残業時間の見直しです。これにより、従業員の労働時間が制約され、長時間労働の是正が図られました。過度な長時間労働は、健康被害やワークライフバランスの悪化を引き起こす重要な問題です。このような事態を防ぐため、労働時間の上限規制を行うことで、労働環境の改善を図りました。
具体的には、原則として残業時間の上限は月45時間・年360時間と定め、臨時的な事情以外ではこれ以上の労働を行わせることが違法となりました。また、臨時的な事情においても、残業時間は年720時間以内・月平均80時間以内・月100時間未満にしなければならないという制約が設けられています。
2.勤務間インターバル制度の導入
勤務間インターバルとは、労働時間と休憩時間のバランスをとるために導入された制度です。1日の勤務終了後から次の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることを定めた制度で、労働者に休息の機会を与えることを目的としています。
具体的には9〜11時間ほどのインターバルを設けることが推奨されています。例えば、夜遅くまではたらいた従業員に対しては、翌朝の始業時間を遅らせるといった、作業効率の向上や労働者の健康への配慮が必要となります。
3.年5日の有給休暇の取得義務化
有給休暇は労働者の権利でありその取得を奨励するために有給休暇の取得義務化が導入されました。有給休暇取得の際は、労働者が会社に申告を行うのが一般的です。しかし、労働環境や業務形態によっては申し出がしにくく、有給休暇を取得しにくいという実態がありました。
そこで、年5日の有給休暇の取得を会社側に義務化し、会社側が労働者に有給休暇を取得させるよう促す形で、労働者の健康を守り、ワークライフバランスを改善できるようにしています。
4.月60時間以上の残業に対する割増賃金率引き上げ
改正前は、月60時間を超える残業時間の割増賃金は、大企業は50%、中小企業は25%と定められており、中小企業ではたらく人たちにとっては不利な制度となっていました。そのため、働き方改革では、中小企業であっても50%の割増賃金を支払うよう改定されました。労働者の残業時間に対して適切な報酬を提供することで、長時間労働の是正を目的としています。
5.労働時間の客観的な把握義務化
以前は、裁量労働制を適用している労働者の割増賃金は、労働契約に設定されたみなし残業時間に基づいて算定されていました。そのため、適用者の労働時間の管理については対象外でした。
働き方改革の「労働時間の客観的な把握義務」では、裁量労働制適用者の労働者や管理監督者なども含めた、すべての労働者の労働時間を客観的な方法で管理・把握することを、法律によって会社に義務づけています。
労働時間の透明化により、適切な賃金支払いだけでなく、労働者の健康状態の把握にもつながります。、長時間労働者へは、医師による面接指導やカウンセリングなどを実施して健康状態をチェックする機会を設けることで、労働者を守ることができる仕組みです。
6.フレックスタイム制の拡充
フレックスタイム制は、労働者に柔軟なはたらき方を提供する制度です。従業員が自分のライフスタイルに合わせて、最適な労働時間を選択できるようになっています。
例えば、従来の単月精算の制度から、3ヶ月を労働時間の精算期間とするフレックスタイム制に移行することで、「7月に多く働いた分を8月の労働時間で調整する」というようなはたらき方が可能となります。この場合は3ヶ月平均での労働時間で管理するため、月平均が法定労働時間内であれば割増賃金は発生せず、また、前月で超過した時間を当月の労働時間として換算することにより、欠勤扱いにもなりません。
そのため「3ヶ月のうちで多くはたらく月と休暇を多く取る月」を設けるといったように、労働者の裁量でワークライフバランスを管理することができます。
7.高度プロフェッショナル制度の新設
高度プロフェッショナル制度は、専門的な技術を持つ従業員に対し、通常の労働規定にない特別な労働条件や報酬を適用できる制度です。技術者やエンジニアなど、専門的で高度な技術を持つ従業員は、その専門性に見合った評価や報酬を受け取れるようになるため、モチベーションの維持に役立ちます。
特別な技術を持つ労働者に対しはて労働条件を柔軟にすることで、会社や産業の発展、ならびに労働者の人材確保を図ることができるようになりました。
8.産業医・産業保健機能の強化
産業医・産業保健機能の強化により、労働者の健康リスクの管理と予防が行われるようになりました。産業医とは、労働者の健康管理などを専門的な立場から指導する医師のことを指します。働き方改革によって、50人以上の労働者を抱える企業では産業医の選任が義務となりました。企業は、産業医が労働者の健康管理を行うために必要な労働者の情報を提供し産業医と労働者間で健康状況を相談する必要があれば、その体制の整備に努めなければなりません。
このように、働き方改革の一環である産業医・産業保健機能の強化は、労働者の健康を守り、ワークライフバランスを保つための重要な制度です。
就活や新卒への影響はある?
働き方改革への取り組みが注目ポイントの1つになる
今日の新卒採用市場において、働き方改革に対する企業の取り組み度合いは、就活生にとって重要なポイントとなっています。ワークライフバランスや労働時間への配慮が志望する理由として一般的になれば、企業は人材獲得のために働き方改革をより重視し、労働者がはたらきやすい環境を作ろうとします。
このような好循環が生まれれば、日本社会全体が働き方改革による恩恵を受け、おのずと就活や新卒への影響も広がっていくことでしょう。
残業時間への制限が影響してくる
新卒としてはたらく人たちは、残業時間の規制による影響を直接的に受けることになります。残業時間が規制されると、身体的・精神的なメリットが大きくなるのが一般的です。
健康やワークライフバランスを保ちたいという新卒や就活生にとってはよい影響があり、それを実現できる会社で長くはたらく人も増えるものと考えられます。
働き方がより多様になっていく可能性
働き方改革に伴い、はたらくスタイルが多様化する可能性が考えられます。特に、フレックスタイム制の拡充や、テレワーク、時短勤務、時差出勤の導入など、1日の労働時間や勤務日数、ならびに労働環境に関する従来の概念が変わることで、個人のライフスタイルに合わせたはたらき方が実現しやすくなるでしょう。
ブラック企業が減少する可能性
新たに導入された法的規制や取り組みにより、いわゆる「ブラック企業」と呼ばれるような、労働条件の悪い企業が減少する可能性があります。法律で義務づけられた変更点も多いため、ブラック企業は減少し、日本社会全体を通して労働環境が健全化されていく見通しです。
まとめ
働き方改革は、日本において長らく問題となっていた過度な労働時間やワークライフバランスの悪化に対処するために展開された、大規模な改革です。その主な目的としては、長時間労働の是正や労働生産性の向上、健全なワークライフバランスの実現、多様な働き方の推進などが挙げられます。
また、就活生や新卒者にとって、志望企業の働き方改革への取り組み度合いは、自身がはたらく企業を選ぶ重要なポイントの一つです。健康で持続可能なはたらき方を推進していく取り組みは、従業員と企業双方にとってメリットがあるといえるでしょう。
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