日本文学の世界には数々の賞が存在しますが、その中でも特に権威と歴史を誇るのが「直木賞」と「芥川賞」です。直木賞は、エンターテインメント性を重視した小説やエッセイを対象とし、芥川賞は純文学の短編小説を対象としています。これらの賞は新進作家の登竜門として知られ、その後の作家のキャリアに多大な影響を及ぼすものとして知られています。
大学生の皆さんがこれらの受賞作を読むことは、現代の文学動向を把握する上で大変有益です。また、受賞作はその時代の社会的背景や価値観を反映していることが多いため、現代日本の文化や歴史にも触れることができます。
今回は、大学生の皆さんにおすすめの直木賞と芥川賞の受賞作20選を紹介します。これらの作品を通して、現代文学の魅力を深く知ることができるでしょう。
直木賞と芥川賞について
直木賞とは
直木賞は、日本の小説家・劇作家である直木三十五(なおきさんじゅうご)を記念して1942年に創設された文学賞です。
主にエンターテインメント性を重視した小説やエッセイなどの作品を対象としており、新進の作家を対象としています。授賞作品は、エンターテインメント小説としての完成度や独自の視点、表現技巧を評価されることが多く、毎年上半期と下半期の2回、受賞作品と受賞者が選ばれます。
直木賞は新人作家の登竜門としての位置付けであり、受賞作や受賞者は注目されます。過去の受賞者には、その後の文壇で大きな影響を持った作家も多く、直木賞はそのキャリアのスタート地点として非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
芥川賞とは
日本の小説家である芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)の名を冠した芥川賞は、1935年に創設された文学賞です。
純文学の短編小説を対象とし、新進の作家を対象としています。芥川賞に選ばれる作品は芸術性や文学的な価値が高く評価されることが一般的で、その作品の持つ独自の世界観や深い人間の洞察、緻密な筆致などが求められます。こちらも直木賞と同様に毎年2回、上半期と下半期の受賞作品と受賞者が選出されます。
芥川賞もまた新人作家にとっては重要な登竜門となっており、受賞者や受賞作は多くの読者や批評家からの注目を浴びることとなります。芥川龍之介自身が持っていた細やかな感受性や独特の文体を継承する形で、新たな時代の作家がこの賞を受賞し、日本文学の歴史に名を刻むこととなります。
読んでおくべき直木賞受賞作10選
1.極楽征夷大将軍
第169回直木賞受賞作です。「やる気なし、使命感なし、執着なし」と評されるのは、室町幕府を開いた征夷大将軍の足利尊氏。本作は、そんな危うい人間がなぜ天下を取れたのか、失脚をしそうになりながらも権力を持ち続けられたのかをエンターテイメントとして紐解いていく作品となっています。
2.木挽町のあだ討ち
極楽征夷大将軍と同じく、第169回直木賞受賞作。時は江戸時代、芝居小屋の立つ木挽町にて遂げられた仇討ちを、ミステリー仕立てで綴った作品です。落語や談義のような語り口で徐々に解き明かされていく真相は非常に面白い内容になっており、山本周五郎賞も同時受賞していることから時代小説としても傑作と言えます。
3.黒牢城
第166回の直木賞受賞作。本能寺の変(1582年)が起きる4年前、荒木村重が城内で発生する難事件に翻弄され、幽閉していた黒田官兵衛にその推理を依頼するという時代小説です。作者である米澤穂信氏は、学園ミステリーで有名な作家。普段とは毛色の違うテーマではあるものの、極上の戦国ミステリーに仕上がっています。
4.少年と犬
第163回の直木賞作品。2011年秋、震災後の仙台を舞台にした「犬と人間」をテーマにした作品です。著者は「不夜城」でデビューした馳星周氏で、短編集の形式にて犬と人の関わりを描いた感動作となっています。
5.宝島
第160回の直木賞受賞作。沖縄の米国統治時代から、日本に復帰するまでの約20年間を舞台にした作品です。現地の言葉が作中にかなりの頻度が出てくるため最初は読みづらいですが、沖縄の歴史などについて当時の空気感が濃密に描かれており、ストーリーだけではないさまざまな魅力が詰まっています。一度は読んでおきたい書籍です。
6.サラバ!
第152回の直木賞作品です。父の赴任先であるイランで生まれ、イラン革命(1979年)によって日本に帰国した主人公が、父の新たな赴任先であるエジプトで少年と出会う物語。著者の西加奈子氏の経歴と酷似しており、自伝的なテイストも感じる作品です。
7.ホテルローヤル
第149回の直木賞受賞作。北国のラブホテルをテーマに、どのような人たちがどのような営みを行っていたのか、短編集形式で過去に遡っていく作品です。2020年には映画化もされており、ノスタルジーを感じる内容となっています。
8.蜩ノ記
第146回の直木賞作品です。一見するとよくある時代劇のようなテーマですが、無実の可能性がある罪によって10年後の切腹を命じられた侍が、武士としての吟次を持ちながら日々を送っていく――という珍しい形式の作品となっています。
9.下町ロケット
町工場を舞台に、大企業との特許をめぐる攻防が描かれた第145回の直木賞受賞作です。著者の池井戸潤氏は、ドラマでも非常に有名な「半沢直樹シリーズ」も手掛けており、下町ロケットもその例に漏れずハラハラドキドキ、カタルシスも感じられる極上のエンターテイメントに仕上がっています。
10.何者
第148回の直木賞作品。登場人物は就職活動中の大学生たちで、10年前ではあるものの大学生らしい葛藤や自尊心、SNSを通した承認欲求などが生々しく描かれており古さを感じさせません。就職活動中の学生が読むと、「あるある」という共感とともに、ギュッと胸を掴まれてしまう焦燥感なども覚えることでしょう。
読んでおくべき芥川賞受賞作10選
1.ハンチバック
第169回の芥川賞受賞作です。ハンチバックとは、背骨が大きく曲がっていることを指す用語のこと。著者である市川沙央氏は重度障害の当事者であり、自身と同じ境遇である重度障害者の主人公がグループホームから心情を吐露していくという作品になっています。
2.荒地の家族
第168回の芥川賞受賞作です。東日本大震災が起きた仙台を舞台に、著者自身の喪失感も含め、虚無感にさいなまれた被災地に生きる人々のありようを描いています。芥川賞は純文学的な側面が強い賞であるため、ドラマティックな展開がなく進んでいくものの、その空気感も含めて一度は読んでおきたい書籍です。
3.この世の喜びよ
第168回の芥川賞受賞作。平凡な女性が語り部の、周りに対する観察・洞察を主軸にした作品です。日常を舞台にしているためドラマティックなストーリーの起伏などはありませんが、平凡な日常や、とりとめのない出来事にも喜びや悲しみなどがいっぱい含まれている作風となっています。
4.おいしいごはんが食べられますように
小規模な職場内での、ままならない人間関係をテーマにした第167回芥川賞受賞作。一見すると「おいしいごはん」という言葉の印象から「アットホームなあたたかいストーリー」と勘違いしやすいですが、実際は少しドロドロした、それでいて淡々とした人間の暗部に触れていくような作風です。
5.推し、燃ゆ
第164回の芥川賞受賞作。アイドルを“推す”女性の主人公が、推しへの心情や推しを持つ人がどういった心理でいるかを描いた作品です。あえて文学的なルールなどに沿っておらず、現代を生きる若者が非常に高い解像度で描写されています。
6.おらおらでひとりいぐも
第158回の芥川賞受賞作。老後の女性がこれまでの半生を語り、そしてこれからについて思いを巡らし、決意をするストーリーです。戦後の一般的な日本女性が送ってきた人生をなぞっているため、歴史背景を含めて学びのある内容になっています。
7.コンビニ人間
第155回芥川賞受賞作。「普通」が分からない、コンビニで働く女性の話です。テーマ自体は重く訴えかけてくるものがありますが、作風や語り口は軽快で、サクサク読み進められる内容になっています。世界各国で翻訳・出版されており、ベストセラーになっている作品です。
8.火花
第153回の芥川賞作品です。お笑い芸人である又吉直樹氏が出版し話題になった本書ですが、売れない芸人が天才肌の先輩芸人と過ごす日々を描くという私小説的な内容になっています。2017年には映画化やドラマ化もされており、一度は読んでおきたい作品です。
9.共喰い
第146回芥川賞受賞作。昭和の田舎町を舞台に起こる、惨劇とまではいかないまでも、鬱屈としたどうしようもない現実を綴る、「血」や「性」が絡み合う粘り気の強い作品です。「合う・合わない」の振れ幅が大きい内容なので、読む前にあらすじやレビューを確認しておきましょう。
10.スクラップ・アンド・ビルド
第153回の芥川賞受賞作。新卒で入社した会社を退職し、実家で就職活動をする主人公と、「早く死にたい」と毎日つぶやく祖父の関わりの中で描かれる物語です。重そうなテーマではあるものの、主人公が筋トレをして過剰に祖父へ関わっていこうとするなど、ややコミカルな雰囲気もある作品となっています。
まとめ
直木賞と芥川賞の受賞作は、その高い芸術性や社会的なテーマを持つ作品が多いため、多くの読者に愛されてきました。 大学生の皆さんもこれらの作品を手に取り、現代文学の世界を深く探求してみてください。文学の力を借りて、より豊かな人生を歩んでいくための一助として、読書を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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