法学部と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは、裁判所で堂々と弁論する弁護士や法律の知識を駆使して社会正義を守る検事、そして公平な裁判を行う裁判官などの姿かもしれません。しかし、実際には、法学部卒業生の就職先は、銀行、証券、保険といった金融業界から、コンサルティング、商社、メーカー、IT関連業界に至るまで、非常に幅広い分野におよびます。
本記事では、法学部とは何か、そしてどのような学科があるのかはもちろん、法学部卒業生が目指せるさまざまな就職先とキャリアパスについて、具体的に解説していきます。
法学部とは?
法学部とは、法律を中心に、政治、経済、社会などさまざまな分野にわたる知識と理論を学ぶ学部です。この学部では法律の基礎知識だけでなく、法律がどのように社会に影響をおよぼし、また社会が法律にどのような要求をするのかを理解することを目指します。法学部の学生は、法律家としての基本的なスキルを身につけると同時に、社会の中で法律が果たす役割について深く考えることが求められます。
法学部の主要学科
法律学科
法律学科は、法学部の中心とも言える学科です。ここでは、民法、刑法、憲法といった基本的な法律知識から始まり、企業法務、環境法、知的財産法など、専門性の高い分野まで学びます。学生は法律の基礎を固めつつ、社会の変化に対応するための新しい法律理論についても学びます。
政治学科
政治学科では、法律と政治の関係に焦点を当て、政治理論、政治思想、国際関係論など、政治に関する幅広い分野を学びます。この学科では、法律がどのように社会の政治構造に影響を与えるか、また政治が法律にどのような要請をするかについて理解を深めます。政治学科の学生は、政策立案や公共管理など、政治と法律が密接に関わる分野でのキャリアを目指すこともあります。
国際関係法学科
国際関係法学科では、国際法を中心に学びます。この学科では、国際社会における法の役割、国際紛争の解決方法、国際組織の機能など、グローバルな視点から法律を考察します。国際関係法学科の学生は、国際法務、外交官、国際機関での勤務など、国際社会で活躍するための知識を身につけられます。
法学部の主要就職先
法曹
法学部の卒業生が目指すことができる職業の中で、最も有名なのが法曹です。これらの職業は、高い専門性と社会的責任を持ち、法の正義と公正を実現するために重要な役割を果たしています。
検事
検事は国の代表として犯罪を起訴し、公判を行う役割を担います。法律知識だけでなく、強い正義感と公平な心が求められる職業です。検事になるためには、司法試験に合格後、司法修習を経て任命される必要があります。社会の安全と秩序を守るため、厳密な法律適用と倫理観が要求される重要な責務を持った仕事です。
弁護士
弁護士は、個人や企業の代理人として、法律相談や訴訟を通じてクライアントの権利を守ります。民事訴訟だけでなく、刑事弁護や企業法務など、活動範囲は広範囲にわたります。弁護士になるには司法試験に合格し、司法修習を終える必要があります。法律家としての専門知識に加え、説得力のあるコミュニケーション能力や、高い倫理観が求められるのも、弁護士の特徴です。
裁判官
裁判官は、裁判所において公正な裁判を実施し、紛争を解決する役割を担います。裁判官には、司法試験の合格後、司法修習を経て、最終的に任命されます。裁判官は、法の適用において公平無私の判断を下すことが求められ、深い法律知識とともに、豊かな人間性が必要とされる職業です。
法科大学院(ロースクール)
法曹三職を目指すには、まず法科大学院(ロースクール)への進学が一般的なルートとなっています。ロースクールでは実務に即した法律教育が行われ、法曹界で求められる実践的なスキルと知識を身につけられます。
銀行
銀行業界では、顧客の資産運用に関するアドバイスやローンの提供、さらには企業の財務戦略の立案など、多岐にわたる業務があります。法学部の卒業生は、法律知識を活かして、融資に関連する業務や法務関係のポジションでその能力を発揮できます。契約法や商法などの知識は、顧客との契約を結ぶ際や、企業間の取引をサポートする際に非常に役立つでしょう。また、リスク管理やコンプライアンスの分野でも、法的な背景を持つ人材が求められています。
証券
証券業界では、株式や債券などの証券の売買、投資アドバイス、資産運用などを行います。この業界では、市場の動向を正確に分析し、投資家に適切なアドバイスを提供する能力が求められます。同時、法律知識も企業の公開やM&A(合併・買収)などの大規模取引をサポートする際に重要となります。特に、金融商品取引法や企業法務に関する深い理解は、証券業界でのキャリアを有利に進める手助けとなるでしょう。
保険
保険業界では、契約法や民法などの法律知識が直接的に活かされる場面が多くあります。特に、保険商品の設計、契約書の作成、クレーム処理などの業務では、法律の解釈や適用が重要になります。法学部卒業生はこれらの知識を背景に、保険会社でのリスク評価やポリシー作成のポジションで活躍できます。
コンサルティング
コンサルティング業界では、法学部卒業生が持つ論理的思考能力や問題解決スキルが高く評価されます。特に、企業のリスク管理やコンプライアンス、組織のガバナンス改善などのプロジェクトでは、法的な知識が重要な役割を果たします。コンサルタントとして法規制の変更に伴うビジネスへの影響を分析し、クライアント企業の戦略立案や運営改善に貢献することが期待されるでしょう。
商社
商社においても、契約関連の業務などで法学部卒業生の持つ強みが発揮されます。国内外の取引において、契約書の作成やチェックは非常に重要で、法律的なトラブルを未然に防ぐための専門知識が求められるからです。商社では多様な国と取引を行うため、国際法や外国の法律に関する知識も欠かせません。
メーカー
各種メーカーにおいては、知的財産権の管理や労働法関連の業務で法学部出身者の強みが発揮されます。新たな製品や技術の開発に伴い、特許や商標の出願・管理は欠かせない業務であり、専門的な法律知識が必要だからです。また、大規模なメーカーでは、従業員との関係や労働環境の整備に関連する法律問題も発生しやすいため、法学部卒業生が活躍できるシーンは多くあると言えるでしょう。
IT関連業界
法学部卒業生は、サイバーセキュリティ、データプライバシー、知的財産権、電子商取引といった分野でも、法律の専門知識を活かすことができます。特に、データ保護法や著作権法など、テクノロジーに関連する法律領域は専門性が高いため、法学部卒業生の強みが発揮できるでしょう。
公務員
法学部の学生は、他学部に比べて公務員試験に挑戦する傾向が高いと言われています。これは、公務員試験においては法律関係の試験が多く、法学部出身者にとって勉強しやすく有利であるためです。
公務員として働く利点には、法律制度や政策形成に直接関わる機会が多いことが挙げられます。また、法律に基づいた公正なサービスを提供することで、社会の公平性と正義を守る役割も担えます。このような仕事は、法律の知識だけでなく、高い倫理観と公共の利益を優先する姿勢を求められるため、法学部の教育が活きる分野と言えるでしょう。
法学部を卒業した人のキャリア
士業の資格を取得する人が多い
士業とは、弁護士、公認会計士、税理士、行政書士など特定の国家資格を有し、専門的な知識や技能をもって個人や企業にサービスを提供する職業のことです。法学部卒業生の中には、これらの士業の資格を取得し、専門家として独立する道を選ぶ人も少なくありません。
特に法律知識が軸となる弁護士や行政書士、弁理士、社会保険労務士などは法学部出身者に人気の職種です。
企業の法務担当になるキャリアもある
企業の法務担当として働くことも、法学部卒業生にとって魅力的なキャリアパスです。企業の法務部門では、契約管理、知的財産権の保護、労働法関連の問題、企業倫理やコンプライアンスの確保など、幅広い業務を担います。これらの仕事は、企業が社会の法規制の中でスムーズに機能し、リスクを管理するために不可欠です。
法学部卒業生は、法律知識に加えて、論理的思考能力や問題解決スキルを持っているため、企業の法務担当者として高い評価を受けることがあります。また、グローバル化が進む中で国際法務に関する知識を持つ法務担当者の需要は増加しており、キャリアの可能性はさらに広がっています。
まとめ
法学部卒業生の就職先は法曹職だけでなく、金融、企業の法務部門、公務員など、幅広い分野におよびます。士業の資格を目指す人、企業で法務担当者として働く人、さらには公務員として社会の公正と正義を支える人々まで、法学部卒業生はさまざまな形で社会に貢献しています。本記事が法学部の学生や、法学部を志望している高校生のみなさんにとって参考になれば幸いです。
パーソルキャリアの新卒採用エントリーはこちら!
パーソルキャリアは“人々に「はたらく」を自分のものにする力を”というミッションのもと、「doda(デューダ)」をはじめとする国内最大規模のHRサービス等、はたらく人と組織に関わる幅広い領域のサービスを展開している会社です。
社員一人ひとりが”キャリアオーナーシップ”を持って自分のキャリアを自ら切り開き、大手ならではのリソースを駆使しながらもベンチャーのような裁量権を持って顧客の本質的な課題を解決をしています。
- ビジネス総合、プロダクト企画、エンジニアなど希望する職種コース別に採用選考を実施中!
- 気軽に就活対策、企業研究ができるイベントを多数開催中!