昨今の起業・スタートアップブームから、新規事業立案に関われる職種・企業を希望する大学生が増えてきました。この記事では、新規事業を立案する上で重要なポイントをお伝えします。新規事業に興味がある方、キャリアの選択肢を増やす意味でもぜひ参考にしてみてください。
新規事業は闇雲にやっても成功しない
新規事業は、常に「手探り状態」で進めます。成功するかどうかは、やってみないと分からないケースがほとんど。百戦錬磨の起業家でも、毎回成功する新規事業を作ることはできません。しかし、だからと言ってプロジェクトを闇雲に進めても成功率は高まりません。少しでも成功する確率を上げるためには、新規事業のコンセプトやストーリーを具体的に描く必要があります。
作りたいものを作るのではない
新規事業立案というのは、自分の作りたいビジネスを作るものではありません。顧客の課題を解決できる事業を作ることが、真の目的です。関係者、顧客に認められてこそ、意義のある新規事業と言えます。たとえ独りよがりな事業を作っても、長続きすることはないでしょう。自分の思いを反映させつつ、顧客のためになる新規事業を立案できる人材になりましょう。
新規事業立案のポイント3選
ここでは、新規事業を立案する際に大事なポイントを解説します。少しでも成功率を高めるために、次の3つのポイントを心に留めておきましょう。
①ビジョンを明確にする
最も大事なポイントは、ビジョンを明確にすることです。どんなに売れる製品・サービスでも、事業のビジョンが明確でないと持続するビジネスにはなりません。一時的には売上が出ても、顧客が離反していき、あるいは新規の顧客を獲得できず、いずれそのビジネスは縮小してしまうでしょう。
ビジョンは顧客だけでなく、社員のモチベーションにも影響します。事業の意義がないと、社員も継続して取り組むことが難しくなるからです。明確なビジョンは、社員のエンゲージメント(愛着心・心のつながり)の高めます。その企業で新規事業を行う意義や本質的な目的を明確にし、その事業が目指す先の未来を示しましょう。
まず己(自社)を深く知る
自分や会社の強み、能力を知ることが重要です。新規事業では組織力、技術力といった企業のさまざまな能力を結集して、顧客に付加価値を提供します。自社の能力をしっかり把握できていないと、顧客に価値を提供することも難しいでしょう。自社に何ができるかを明確にすることが、新規事業を始める最初のアクションになります。
メンバーの共感を得る
新規事業の成功には、メンバーの協力が不可欠です。メンバーの協力を得るには、まずメンバーの理解や共感を得なければなりません。独りよがりではなく、共感を得られるような事業アイデアを立案する必要があります。まずは何よりも自身の熱い思いが求められますが、それだけでは共感を得られません。なぜその事業が必要なのかなど、新規事業の価値をメンバーにも認めてもらえるようにコミュニケーションしましょう。
事業アイデアについては、多くの顧客の課題解決につながるようなアイデアが理想です。昨今はSDGsやESG経営のトレンドもあり、顧客や社会のためになるようなアイデアが共感を得やすい傾向にあります。
Tips:ビジョンの明確化に役立つフレームワーク
ここでは、ビジョンの明確化に役に立つフレームワークをご紹介します。新規事業立案に挑戦したい方は、ぜひこれらのフレームワークを活用してみてください。新規事業以外の業務でも使うシーンがありますので、勉強することをおすすめします。しっかりと学びたい方は、独学ではなくビジネススクールに通うのも手です。
- MVV:事業の方針を考える
- PEST分析:外部環境を把握する
- SWOT分析:強みと弱みを分析する
②顧客の課題を明確にする
顧客が抱える課題を見つけ、その課題を解決できるソリューションを作っていくことがすなわち新規事業立案になります。課題には「潜在的なもの」と「顕在的なもの」があり、潜在的な課題のほうが競合他社も発見できていない可能性が高く、難しい分、取り組む意義が大きいです。
「問題」と「課題」を混在させない
「問題」と「課題」は一見似ていますが、意味するところは異なります。問題とは、組織などが目標に向かって進む中でぶつかるもので、その時点では解決方法を検討していない状態のもの。課題とは、ぶつかった問題を紐解き、どのように解決するべきかというテーマを持ったものです。問題の中には、影響は軽微であるという判断から「解決をしない」という選択をするものもあるため、解決を行うと決めたものが課題となります。
問題は定性的であることがほとんどで、解決に至るための水準も不明瞭です。そのため、顧客が持つ問題を「課題」として取り上げ、どういった方法で解決へと導くのか、というプロセスで考えるようにしましょう。
ユーザー心理に立って考える
新規事業を作っていくには、ユーザーの立場で物事を考える必要があります。そうしないと、ユーザーの課題を解決できるいいソリューションを提供できないからです。ユーザーの視点が欠落していると、顧客が不利益を被ることさえあります。
昨今の新規事業では、アプリを作成し、サービスを提供することも多いと思いますが、その際に重視される項目に「UI/UX」があります。UI(ユーザー・インターフェース)はアプリを使うユーザーの使い心地、UX(ユーザー・エクスペリエンス)はその使い心地を通して得られる顧客体験を指す言葉です。
ユーザーがサービスを通じてどんな課題を解決できるのか、どんなよい体験をできるのかを考えていくスキルが必要です。ユーザー心理を考え抜くことは、仕事のあらゆる場面で必要となります。もちろんどんな仕事にも必要ですが、新規事業においてはとりわけ求められる能力です。
Tips:顧客課題の明確化に役立つフレームワーク
ここでは、顧客課題の明確化に役に立つフレームワークをご紹介します。経営大学院では、ロジカルシンキングやマーケティングと言った科目で履修する内容です。独学での知識の詰め込みだけでは、実務に生かすのは難しいので、職場のメンバーと一緒に学ぶことをおすすめします。
- As is/To be:現実と理想のギャップを把握する
- ロジックツリー:情報を整理し全体を把握する
- ペルソナ分析:ターゲットについて分析する
③顧客への提供価値を明確にする
新規事業をローンチする際に重要なのは、顧客への提供価値を明確にすることです。提供価値が明確ではないサービスに、顧客は惹きつけられません。世の中にすでにあるサービスを比べてどう差別化し、より顧客のためになるかをアピールする必要があります。「どんなモノ(サービス)か」ではなく、その先にある体験価値=提供価値を提示することが求められます。
特に提供価値(value)については、価値の大きさが顧客から支払われる対価になります。価値が大きければ大きいほど、顧客は多くの対価を支払う意義があると判断します。提供価値が小さいにもかかわらず、高い価格設定してしまうと、顧客から認められるのは難しいでしょう。
顧客への提供価値は新規事業の重要なファクターになります。時間をかけて練り上げていきましょう。
ニーズを満たすだけでは価値とは言えない
いくらニーズに合致したサービスができても、競合と同じであったら顧客からの支持は得られません。顧客は常に既存のサービスと比較し、サービス利用の意思決定をします。単にニーズを満たすだけでは勝ち残れず、いずれ市場から撤退していくことになるでしょう。すなわち、「数ある類似サービスの中から自社のサービスを選ぶ理由」を顧客の立場になって考える必要があるのです。
競争優位性を見出す
既存市場に新規事業をローンチする場合、不可欠なのが競合優位性です。他社と比較して自社サービスの競争優位性を考える必要がありますが、真新しい価値が必要という訳ではありません。例えば、サービスの価格設定を他社が真似できないレベルで実現したり、そのサービスを利用することでステータスになるようなブランド力を提供したりできれば、それが競合優位性になります。
重要なのは、その優位性を競合他社が真似できないようなレベルや仕組みにできるかどうか。特に価格戦略は競合他社と似やすいため、「他社が真似できないレベルまで優位性を追求できるか」といった点も考慮するようにしましょう。
Tips:提供価値の明確化に役立つフレームワーク
顧客への提供価値を明確化する上で役に立つフレームワークをご紹介します。大学でマーケティングを履修した方は、すでにご存じかもしれません。マーケティングの授業には新規事業に役立つ内容が詰まっているので、経済学部・経営学部の方はしっかり学ぶことをおすすめします。
- 4P分析:対象の製品・サービスについて分析する
- ビジネスモデルキャンバス:ビジネスモデルの構築をする
- ファイブフォース:周辺要因から収益性を分析する
プレゼンテーションも決め手の一つ
サービスや製品は、いいプロモーションがあって初めて顧客に認知してもらえます。そのため、サービスのメリットや価値を適切に伝えるプレゼンテーションができるかどうかも非常に重要です。
また、顧客向けだけでなく、メンバー向けのプレゼンテーションも重要です。関係者の協力を得るためにも、新規事業のコンセプトや提供価値を丁寧に伝えなければなりません。見せ方も重要なことから、プレゼンテーションは新規事業成功のカギになると言っていいでしょう。
「1スライド1メッセージ」が基本
「できるだけ詳しく理解してもらいたい」と、スライドにいろんな情報を盛り込んでしまうのは避けたいところ。情報量が多い資料は読みにくく、資料を後から見返した際に内容を整理しにくいというデメリットがあります。相手の印象に残るプレゼンをするなら、1スライドで伝えたいメッセージは1つに絞ると効果的です。
Kissの法則(Keep it short and simple)
相手に分かりやすくメッセージを伝える方法に、「Kiss」というものがあります。Kissは、「Keep it short and simple」の略称で、「短く簡潔」という意味です。相手に何かを伝えるとき、特に制限時間のあるプレゼンテーションやピッチでは、これができないと相手に事業アイデアをしっかり伝えられません。Kissを体に沁み込ませる方法として下記の3点がありますので、反復練習しましょう。
- 文章の単純化・短縮化
- 体言止め
- 必要のないものは削る
発表の練習をする
練習なしでプレゼンテーションがうまくなることはありません。「緊張してしまう」「話すべき内容を忘れしてしまう」という方は多くの場合、プレゼンの練習不足と言ってよいでしょう。プレゼンは、練習すればほとんどの人が上達し、聴衆に分かりやすく伝えることができるようになります。説明すべきポイントの原稿をまとめ、どのような段取りでプレゼンを進めるのかを決めるなど、準備と練習を怠らないようにしましょう。
まとめ
今回は、新規事業立案の進め方や成功させるポイントについてお伝えしました。新規事業立案のイメージが、少しは具体的になったかもしれません。新規事業はスキルだけでなく精神的にも成長できる仕事なので、興味がある方はぜひインターンシップなどに参加してみてください。
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