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【大学生向け】ダイバーシティ(多様性)とは?インクルージョンとの違いを解説


近年、ビジネスシーンを中心に「ダイバーシティ」という言葉を見たり聞いたりする機会が多くなってきました。世界中の企業がさまざまな角度からダイバーシティの考え方を取り入れ、経営戦略やミッション・ビジョンなどに組み込んでいます。とはいえ、大学生の中には「聞いたことはあるけどよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ダイバーシティの基礎的な知識や、似た言葉である「インクルージョン」との違い、ダイバーシティ推進の事例について解説します。

多様性(ダイバーシティ)とは

ダイバーシティ(Diversity)は、直訳で「多様性」という意味を持つ英語です。近年、日本含め世界中で、ダイバーシティの考え方を取り入れた組織づくりが意識されるようになってきています。まずはダイバーシティの意味や重要性、そして具体的にどのような種類があるのかをもつ見ていきましょう。

ダイバーシティの基本的な意味

「多様性」を意味するダイバーシティですが、その基本的な概念は、さまざまな個性や違いを受け入れ、尊重し、有効活用して組織の中に取り入れる姿勢のことです。ここでの個性や違いとは、国籍、性別、年齢といった外見や所属の違いはもちろん、宗教や性的指向、価値観といった内面的な違いも含みます。

多様な人材を登用・活用し、生産性や競争力を高めるために、ダイバーシティを経営戦略としている企業が増えていると言えるでしょう。

ダイバーシティの重要性

近年、企業を取り巻く環境は大きく変化しており、多くの経営課題に対して速やかにアクションしなければなりません。そのような中、ダイバーシティは働き方改革の一環としても重要性を増してきています。その背景には、いくつか要因があります。

例えば、日本では少子高齢化が大きな社会問題となっています。高齢者の割合が増え、現役世代の数が減っていく中で労働力を確保するには、さまざまな特徴を持った人材に戦力として働いてもらう必要があります。

そういった状況を受け、政府もダイバーシティ経営を推進しています。経済産業省は2020年9月に「ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ」という資料を発表。その中で、ダイバーシティの重要性やその効果について指摘しています。

ダイバーシティの種類

ダイバーシティはさまざまな個性や違いを受け入れる姿勢とご説明しました。では、具体的にどのような「違い」を受け入れるとされているのでしょうか?ここでは主なものとして、性別、年齢、民族性、宗教、性的指向について解説していきます。

なお、ここで挙げた項目はあくまで一例です。他にもさまざまなダイバーシティがあることは理解しておきましょう。

性別

ダイバーシティと言えば性別、特に「女性の活躍に焦点を当てた取り組み」として捉えている方も多いかもしれません。あくまでも性別はダイバーシティの一種に過ぎませんが、重要な項目であることは間違いないでしょう。

「女性の活躍推進=ダイバーシティ」と捉えられがちであり、実際に多くの企業がダイバーシティへの取り組みの一環として女性の活躍推進を掲げている背景には、「日本は国際的に男女格差が諸外国に比べて高い」という事情があります。そうしたイメージを払拭するという目的も含めて、評価制度の透明性を高めたり、柔軟性の高い働き方ができる制度を導入したり、女性管理職の候補となる人材を育成したりしています。

年齢

ダイバーシティという考え方の下では、あらゆる年齢の人材を有効活用する姿勢が求められます。そもそも、日本は少子高齢化により労働人口が減少し続けており、業界によっては従来の採用方法では人材を確保できないケースが増え、求職者と企業のマッチングも難しくなると言われています。

労働力を確保するためには、定年年齢の延長や定年退職した人材の再雇用などを通して、幅広い年齢層に活躍してもらわなければなりません。もちろん、単に高齢者を雇用すれば解決するというわけではなく、適切な業務や職責を与え、また業務を教えられるような管理者や体制も整備する必要があります。

民族性

グローバル化の加速に伴い、近年は日本でも外国人労働者が増加しています。民族性についても認め、心理的・物理的に「壁のない環境」で働ける支援が必要です。

外国人労働者を受け入れることは、ダイバーシティの推進はもちろん、他にも多くのメリットがあります。最大のメリットはやはり人材不足の解消です。前出のように日本の労働人口は年々減少しているため、外国人労働者の受け入れは重要な政策の一つにもなっています。

また、文化の異なる外国人と一緒に働くことで、社内コミュニケーションの活性化につながる場合もあります。また、日本人では気づけない観点でのアイデアが生まれることもあるでしょう。職場に外国人を受け入れる場合は、言語や文化、価値観を受け入れ、社内で困らないように配慮していくことが大切です。

宗教

かつて宗教は、特定の教えから外れる人を排除してきた側面がありました。しかし、現在ではそのような壁を取り払い、どのような宗教であっても認め合い、同じ企業内で成長しようとする姿勢や環境が不可欠です。性別や年齢と比べると、宗教のダイバーシティは「実際に企業がどんな取り組みをしているのか」が分かりにくいかもしれません。イスラム教の例を見ていきましょう。

イスラム教徒は「ムスリム」と言われますが、ムスリムには1日5回の礼拝が義務付けられており、礼拝前には体の各部位を水で清めなければなりません。ムスリムのスタッフが働きやすいように、お祈り専用のスペースや体を清める洗い場を用意した企業もあります。

また、イスラム教では豚肉やお酒(アルコール入りの調味料)の摂取が禁じられています。例えば、新年会や懇親会といった社内イベントでハラールフード(イスラム教徒が摂取してもよいとされている食べ物)を提供するといった取り組みもダイバーシティの考え方にのっとっていると言えるでしょう。

性的指向

性的指向とは、恋愛または性愛がいずれの性別を対象とするかを指します。性的指向は人によってさまざまで、自身と異なる性別の人(女性なら男性)を好きになる人もいれば、自分と同じ性別の人を好きになる人や、相手の性別を意識せずにその人を好きになる人などもいるでしょう。また、「誰に対してもそういった感情を持たない」というタイプも珍しくありません。

性的指向がマイノリティの人は、職場においてストレスを感じることもあります。例えば、結婚していないことへの質問に対して、周囲が思っている以上につらく感じることもあります。

企業の取り組みとしては、性的指向に基づくハラスメントや差別の禁止を社内規程に明記したり、相談窓口を設置したりするといった対応が中心です。

インクルージョンとは

ダイバーシティと同じような場面で「インクルージョン」という言葉も近年よく聞かれます。言葉の意味やダイバーシティとの関係について見ていきましょう。

インクルージョンの基本的な意味

インクルージョン(Inclusion)は、直訳すると「包括・包含」という意味です。企業内のすべての従業員が仕事に参加し、それぞれの経験やスキル、考え方が認められ活かされている状態を指します。

インクルージョンの重要性

インクルージョンを推進することは、企業にとって重要です。インクルージョンが実現できている企業では、従業員の個性や価値観が尊重され、働くことに対するモチベーションが高い状態が維持されているため、離職率も低い傾向にあります。

ダイバーシティと比べると、まだまだインクルージョンに取り組む企業は多くありません。インクルージョンに積極的に取り組めば、企業価値の向上や採用におけるアピールにもつながるでしょう。

ダイバーシティとインクルージョンの違い

ダイバーシティとインクルージョンは同じような場面で使われ、意味も似ています。とはいえそれぞれ異なる概念ですので、違いをしっかりと認識しておきましょう。

意味は似ているが異なる二つの概念

ダイバーシティは人材の多様性を認める考え方で、インクルージョンは個々の従業員を活かす考え方です。これらは似ていますが、非なるものです。基本的には、インクルージョンを達成するためにはダイバーシティの実現が前提条件になる、と言えるでしょう。

それぞれを詳しく見ていきます。

ダイバーシティは多様性を認めること

ダイバーシティとは、性別、年齢、宗教などが異なる人であっても、その多様性を認め合うことです。多様性のある状態を実現することに焦点が当てられているので、言い換えれば多様性が認められた環境を整えることが目的となります。

インクルージョンは多様性を受け入れ活かすこと

インクルージョンでは、組織として一体になることが意識されます。人々が個性を尊重された環境で関わり合いながら、組織の一員としてワークしている状態を実現するという方向性が重要です。ダイバーシティが整った環境で、インクルージョンによりあらゆる人材が最大限に能力を発揮できるようになる、といったイメージでしょうか。

どちらもバランスよく実現することが重要

ダイバーシティとインクルージョンは片方だけでなく、両方バランスよく実現することが重要です。それぞれの考え方を適切に取り入れアクションすることで、組織としての生産性を高められ、企業の価値も向上していくでしょう。

両方セットで用いられることが多い

ダイバーシティとインクルージョンは「ダイバーシティ&インクルージョン」といった形で、ひとまとめにして使用されるケースが多くあります。これは、両者が異なる概念であり、また組織として最大限の効果を出すには「どちらか片方だけ」では不十分であると考えられるためです。

ダイバーシティ推進の例

今日では、業種や業態を問わず多くの企業がダイバーシティを推進しています。最後に、実際に企業が行っているダイバーシティ推進の例を見ていきましょう。

柔軟な勤務体系

フレックス勤務や裁量労働制といったように、柔軟な勤務体系を採用している企業は多くあります。柔軟な働き方を整備することはダイバーシティ推進に向けた有効な手段であるとともに、ワークライフバランスの向上にも深く関係します。

柔軟な勤務体系があれば採用の際にいろいろな求職者からの応募が期待でき、採用力の向上につながる可能性も高いでしょう。

育児休暇・介護休暇などの充実

特に女性活躍推進といった観点や、企業内だけでなく社会全体で子どもなどを支えようという考えから、育児休暇・介護休暇などの充実を図る企業も増えています。もちろん、こういった制度は単に制度だけあっても意味がありません。

従業員が利用しやすいような職場風土の醸成や、相談窓口の設置、復職後の支援といったように幅広いサポートが必要です。

女性リーダーの比率増加

積極的に女性リーダーの比率を増やそうとしている企業も少なくありません。日本の多くの企業では、女性の管理職やリーダーの比率が依然として低い状況です。企業を引っ張るリーダーの存在は非常に重要であり、男性だけでなく女性の意見も広く反映させることで、組織としてより成長しやすくなると考えられます。

女性リーダーの比率を増加させるといっても、無理やり増やすだけでは本末転倒です。従業員の育成、女性側の意識改革など、全社的なプロジェクトとして取り組むことで成果につながります。

障がいのある学生への支援

大学などでは、障がいのある学生への支援を行っているケースもあります。大学内でガイドラインを整備・発行したり、必要に応じてコミュニケーションに配慮したり、バリアフリー設備を設置したりしています。大学によっては、企業に対して障がいの内容や程度にかかわらず能力を活かせる仕事に従事できるように働きかけているところもあります。

障がいがある人材が業務を進める上では、適切な配慮やサポートが欠かせません。とはいえ、基本的に業務内容については障がいがあったとしても、ない人と同じように任されているはずです。「障がいも個性」として、さまざまな人材が活躍できる環境の整備が企業には求められています。

ジェンダー教育

ジェンダーについての社内教育を積極的に行っている企業もあります。LGBTQに関する教育や、役職者や女性社員などの階層別教育など、機会や種類はさまざまです。

ジェンダー教育を受けることで、そこで働く従業員一人ひとりの意識も変わり、よりダイバーシティの実現に近づけるでしょう。

その他にもさまざまな取り組みが

今回ご紹介したのはあくまでも限られた事例でしかありません。その他にも、さまざまな企業でダイバーシティ・インクルージョンの推進に関する取り組みが実施されています。企業によっては推進担当役員を設置するなど、より積極的に取り組んでいる場合もあります。

まとめ

ダイバーシティの考えは、企業としてはもちろん、個人としても押さえておくことが大切です。世の中にはいろいろな人がいますが、同じ人は一人として存在しません。

また、今後ダイバーシティの考えはより企業経営に不可欠なものになっていくと考えられます。就職活動の際には、志望する企業がどのような取り組みをしているのかについても確認しておきましょう。

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